【Book】数学ガール/フェルマーの最終定理

結城浩 著、
ソフトバンククリエイティブ 刊、
証明されたフェルマーの最終定理の奇跡を追体験する。


 「僕」が好きな数学に、興味を持った従妹のユーリ。「僕」の友達、黒髪の才媛・ミルカさん、おっちょこちょいだが根性のあるテトラちゃんと共に、問題を解く楽しみを理解していく。
 「ピタゴラスの定理」「素数の性質」といった簡単な道具から、「複素平面」「群・環・体」「楕円関数」のような高度な道具へと話は進み、最終的にフェルマーの最終定理の証明を追体験する。


 「数学ガール」の続編。
 中学校で習う話から大学レベルの話まで取り扱う内容は広いが、前作同様パズルを解く程度の平易な説明となっており、「未知の問題を解いて理解していく」という過程を純粋に楽しむことができる。


 本書の見所の一つは当然、副題にある「フェルマーの最終定理」に関する説明だが、個人的には、人間が物を数えるのに発明した「数」を代数学的に拡張した「群・環・体」、幾何学的に拡張した「複素平面」、その2つの世界を結びつけるオイラーの公式と、そこから導かれる「最も美しい式 e^iπ=-1」への流れテーマとして気に入っている。


 「フェルマーの最終定理」は下記のように証明されるまでに360年かかっているが、それはワイルズが単独で導いたものではない。先人達の研究や、様々な関連理論の構築の上にワイルズの証明が成り立っている。
 本書では、それらを直接説明するのではなく、まず1章から9章で、数学の基礎的テーマについて「例示から概念を導く」「背理法で証明する」「代数と幾何を結びつける」といった方法論で丹念に説明したしていく。
 そして第10章では、「フェルマーの最終定理」証明前夜の1986年時点で示されていたいくつかの証明や予想を概観し、最後の「証明」を駆け足で味わっていく。
 高度に専門的な数学的知識を不要とし、様々なピースが組みあがっていく様子を楽しむことに専念できるつくりになっており、かえって数学の本質を学ぶのに最適であると言える。


・3世紀、代数学の父・アレキサンドリアディオファントス、「算術(アリトメティカ)」(ギリシア語、全13巻)を著す。
・1621年、フランスの数学者、クロード・ガスパール・バシェ・ド・メジリアックが「ディオファントスの算術」のうち当時現存していた第6巻をラテン語に翻訳。
 「いまはじめてギリシア語とラテン語で刊行され、そのうえ完璧な注釈をもって解明されたアレクサンドリアディオファントスのアリトメティカ6巻、および多角数に関する1巻」として対訳版を刊行。
・17世紀、フランスの法律家、ピエール・ド・フェルマー、数学者との交流と持ち余技として数学の研究を行う。
 「バシェの算術」を入手・研究し48の発見を書き込みとして残す。
・ピエール・ド・フェルマーの息子、クレマン・サミュエル・フェルマーが、父の没後、書き込み入りの「算術」を「P・ド・フェルマーによる所見を含むディオファントスの算術」として刊行。
・後の数学者が48の書き込みについて証明を試み、47件までは成功。
 しかし、問題「x^2 + y^2 = z^2 の有理数解を求めよ」の欄外に書かれた「一般に累乗した数を分けることは、二乗を除いて不可能。私は、真に驚くべき証明を発見したが、余白が少ない。」については長い間証明することはできず、「フェルマー予想」「フェルマーの最終定理」と呼ばれる。
・1995年、イギリスの数学者・アンドリュー・ワイルズが、「フェルマーの最終定理」を証明。


■著者情報
結城浩 - Wikipedia
結城浩 - はてな
結城浩 - The Essence of Programming
※著者のブログサイト。
結城浩のはてな日記
※著者のブログサイト。


■書誌情報
数学ガール/フェルマーの最終定理(2008.07.30/2008.08.03)


■装画
たなか鮎子
Ayuko Tanaka -sakanaweb
※挿画者のウェブサイト。


■装丁
米谷テツヤ


数学ガール/フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)

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