【Book】とろける鉄工所

野村宗弘 著、
講談社 刊、
溶接痕が気になる人々。


 広島の小さな鉄工所「のろ鉄工」で働く溶接工達の生業を淡々と描く。
 溶接工と言えば様々な金属部材を溶接するのが仕事である。素人考えでも危険と隣り合わせの職場だと容易に想像できるが、実際に溶接工をしていたという著者が描く世界はその想像をはるかに超えている。


・出たらいけない感じの液体が「ドロッ」と飛び出て……そんで、失明。
・平気ですって、耳のウラちょっとかすっただけですから。
・焼けた目玉を動かすと異物がコロコロ転がるような感覚があって激痛……


 しかしその内容は3K職場の自虐ネタだけではない。職人としての誇り、研究心、道具に対する愛着、家族の理解と思いやりなどをしっかりと描いており、登場人物はいずれも好感が持てる。

 同じ工務関連職場を主題とした作品でも「ナッちゃん」は技巧の面白さで魅せる内容だが、本作品は職場作業と日常生活の描写を重視している点が異なる。


 装丁はナルティス。
 カバーは用紙の選択、ニス加工など凝っている。


■著者情報
野村宗弘 - Wikipedia
よそ行き東京サミット
※著者のウェブサイト。


■作品情報
とろける鉄工所 - Wikipedia
とろける鉄工所 - はてな


■書誌情報
とろける鉄工所 第1巻(2008.11.21/2008.11.21)
※以下、続刊予定。


■装丁
新上ヒロシ(ナルティス)
「本」のデザイン「ナルティス」boss blog
※装丁者のブログサイト。

とろける鉄工所(1) (イブニングKC)

とろける鉄工所(1) (イブニングKC)