【Book】俺はまだ本気出してないだけ

青野春秋　著、
小学館　刊、
人生の折り返し地点で全てを捨てて再出発する無謀な勇気。

　なりゆきで就職して15年なんとなく働いてきた大黒シズオは、40歳にして勤務先に辞表を提出し自分探しを開始した。といっても、高齢の父・高校生の娘と3人暮らしの自宅でごろごろしながらゲーム三昧の日々を送るのみ。
　そして突然思いついたように宣言したのは「俺、マンガ家になるわ」の一言であった。これまでに漫画を描いた経験もなく漫画への深い思い入れがあるわけでもない。本当にたまたま見た雑誌の新人賞募集がきっかけであった。
　父は呆れて説教をし娘はあきらめ超然としているが、大黒シズオは己の能力を疑わず無謀な道を突き進むのであった。

　本作品の主人公は、一見して典型的な駄目人間として描かれていいるが、実は大人物なのだと思う。
　才能も思いいれもない「漫画」に情熱を燃やすことができるのは、己を信ずる絶対不動の強い精神があるからだ。
　一回り以上も年下の者から揶揄されたり、家族からは全く期待されなかったりという状況下でも、卑屈にもならず挫折もせずにいる。かといって能天気なわけではなく苦悩の限りを尽くす。
　そんな生き方に敬意が湧いてくる。

■著者情報
青野春秋 - Wikipedia
青野春秋 - はてな

■書誌情報
俺はまだ本気出してないだけ　第1巻（2007.10.30/2007.11.04）
俺はまだ本気出してないだけ　第2巻（2008.04.26/2008.11.XX）
俺はまだ本気出してないだけ　第3巻（2009.02.25/2009.03.XX）
※以下続刊。

■参考情報
青野春秋の謎
※id:tanaka0903さんのブログエントリ。情報露出の少ない著者像について考察している。

■装丁
Kurosawa Chieko (opon)