【Book】でもくらちゃん

なかせよしみ 著、
徳間書店 刊、
1ダースの同形少女が演じ見せる混乱と調和。


 昭和20年、出茂倉家に一組の双子が生まれた。昭和42年、双子は同日にそれぞれまた双子の母となった。平成に入ってこの4人は同時に子供それぞれ三つ子の女の子を授かった。
 かくして誕生した12人の「でもくらちゃん」は、見事な同調行動で力強く毎日を暮らすのだった。


 三つ子以上の多生児(本作は正確には三つ子4組の従兄弟だが)が登場し、さらに主人公に収まっている作品は限られている。ぱっと思いつくのは「おそ松くん」(赤塚不二夫 著)、「みつどもえ」(桜井のりお 著)、「七人のナナ」(今川泰宏 作、国広あづさ 画)(これも正確には多生児ではない)位で、12人となると他に例を見ない。

 しかも上記の作品では、多生児各位に性格・行動の差異を持たせ、容姿・生い立ちの同質性との対比が面白さの源泉になっているが、本作品では12人はそのような差異を極力廃することが話作りの根幹になっている。

 12人は親たちも区別しにくい同一性を特徴としており、時には自分自身ですらも、自他を区別できなくなるほどである。
 時に一糸乱れぬ同期動作で一個の群体として動き、また時には時差を持つ繰り返しや連続の動作でまとまりを見せる。


 本作品は著者が1997年から同人誌で発表していたシリーズ作品の選り抜き・商業出版したものとのことで、「月間コミックリュウ」誌の連載作ではないらしい。
 これを機に他作品の単行本化や新連載化が行われると嬉しい。


■著者情報
なかせっとActivities
※著者ウェブサイト。


■書誌情報
でもくらちゃん(2009.07.18/2009.09.01)


■付録情報
・本体表1、4に登場人物一覧イラストを収録。


■装丁
リュウ装幀室 w2

でもくらちゃん (リュウコミックス)

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