【Memo】政治とメタバース

 4/21、「メタバースフォーラム分科研究会『政治とメタバース』」を参加してきました。


■概要
主催:
 メタバースフォーラム
日時:
 2009/4/21(水) 19:40〜20:40
場所:
 秋葉原ダイビル7F デジタルハリウッド大学 ROOM-5
講演者:
 民主党衆議院議員高橋昭一


■内容メモ
▼政治とメタバースの関係
・本講演のテーマ「政治とメタバース」については、「メタバースを政治に利用すること」と「政治を利用してメタバースに貢献すること」の両面を考えてみて見たい。
メタバースの政治利用としては、鈴木寛氏(当時・民主党参議院議員、現・文部科学副大臣)が国内でSecondLifeが流行った2007年頃、事務所を開設したのが代表的事例。現在は閉鎖。
・高橋氏は「SecondLife内に住んでいる」と豪語するヘビーユーザで、上記にも協力。
・その他の事例として、民主党衆議院議員熊田あつし氏が「熊田あつしSL事務所
・現状では「SecondLife内に事務所を開設した」という宣伝効果しか期待できないが、活用方法を模索したい。
アムステルダムシンガポールなど、現時点でもSecondLifeサーバを新設する国がある。


SecondLifeの現状
SecondLife電通博報堂が喧伝してブーム化しようとしたが、当時のマシンスペックでは荷が重いこと、何をするにつけても操作が難しく初心者に敷居が高いことから廃れている。
・SIMが激減。当時電通がぶちあげた「バーチャル東京」も閉鎖、阪神大震災の献花台があった神戸SIMも閉鎖されている。
・ただ、一定規模のユーザ/コミュニティは残存。現在SecondLifeに残っている人は物(なんらかの作品、コミュニティなどの関係を含め)を創る人。


SecondLifeと創造の可能性
SecondLifeは無償で利用可能な3D物理シミュレーター/ビルダーという側面で貴重。
・オブジェクト制作環境・技術は着実に進化(ツール、及びユーザノウハウとして)。
・今日の講演でデモするために、国会議事堂の実物大モデルを作ってみた。半日程度でほぼガワを完成することができる容易さ。
・見てもらえれば分かるが、通常の見学では見られない箇所を簡単にデモできる。また画像などでは実感できない「身体との関係でみたスケール感」がある。
・「軽井沢SIM」で行われた写真展の例。現実では費用がかかりすぎる「壁一面に大伸ばしした写真」なども簡単に実現できる。
・街づくり、イベント会場のプレゼンツールとして有効。バリアフリーの回遊ルートや順路・導線確認などに活用できるのでは。


SecondLifeと経済効果
・オブジェクト販売での金銭メリットは、日本等先進国では上げづらいが、貧しい国では十分な経済効果として存在する(1$約270L$)。
SecondLifeを特区と位置づけてオンラインサービスの基盤にできないか。例えばインターネットラジオは個人でも開設が容易で広がっているが、音楽著作権の壁がある。著作物利用の制限を一部解除するような場所にする。


SecondLifeとコミュニケーション
SecondLifeのメリットの一つはコミュニケーション。対面コミュニケーションが取りづらいユーザに敷居を下げる。
・障害者:ボイス/テキストチャットを選択可能であること。
・ひきこもり(外出・対人が苦手):在宅で行動可能、SNSの特徴であるフレンド関係は必須ではない。
SecondLife内生活/コミュニケーションは現実での立ち居振る舞いの訓練・教育にも活用可能。
・「国会議員」として話すと耳を傾けられない話も、一個人として酒場で話すと以外にすんなり受け止められる場合がある。個人と背景の距離感を保ちやすい。
・国境を越えたコミュニケーション。翻訳を組み合わせれば、任意言語で会話可能。


■感想
・もう少し政治寄りのドロドロした話が出てくることを期待していたが、純粋なSecondLife論(危機感と活用促進)であった。
・上記の可能性・効果は、メタバースに特化したものではなく、様々なネットサービスで共通する面も多いが、メタバースなりの切り口もあり一考の余地はある。
・高橋氏はTV・ラジオ製作畑出身でFLASHアニメクリエイターでもあり、SecondLifeもコンテンツシステムの一種であることから、児童ポルノ規制・東京都青少年健全育成条例改正の問題について若干の会話をさせて頂いた。基本的に、現在問題となっている行き過ぎた規制について反対の立場をとっておられるとのことのこと。


■備考
SecondLifeの敷居の高さの一つは専用クライアントの必要性だが、HTML5の拡張としてGoogleが3Dエンジンのネイティブ化を目論み中など、数年以内に専用クライアント不要の環境が整う可能性がある。
IBMがLinden Labに協力してオープンソース化(OpenSIM)推進とビジネスツール化(Lotus SameTimeへの組み込み)を行っている。
  http://www.youtube.com/watch?v=SfqGwKFStuw
iPhone / iPad用クライアント「PocketMetaverse」が2009年12月にリリースされている。
  http://www.pocketmetaverse.com/
  ※無償版、有償版あり。
・今はなき電通の「バーチャル東京」は16のSIM(開設当初)を使った領域で、DVD化などで話題となった「スキージャンプ・ペア」を任意アバターで実演する大会が開催されたりした。