【Book】シュメール星人

ツナミノユウ 著、
集英社 刊、
安住の地をもとめ、シュメール星人の苦悩は今日も続く。


 2002年、地球に飛来した1隻の宇宙船は人々の驚愕をもって受け入れられた。
 搭乗していたシュメール星人と地球人の接触は平和裏に進み、技術者による宇宙船の検分が行われるが、その技術は原始的で宇宙飛行に成功していたのが不思議とさえ技術者に言わしめる。
 シュメール星の文明水準は地球より20年遅れていると結論付けられるや、人々の関心はがっかりムードとともに薄れ、世界各国からは受け入れをたらい回しされる状態となる。

 2006年、ようやく受け入れ先が日本に決定した。社会に溶け込めるかを計るため、1人のシュメール星人代表が「異文明ふれあい大使」として2年間、砕玉県砕玉市のアパートで暮らすこととなった。
 宇宙船で待機する仲間の期待を一身に受け、ごく平凡な日常生活を全うすることだけを念頭に暮らす主人公に、カルチャーギャップ、本音と建前、偶発的な不幸な事故が次々と訪れる。


 地球に飛来する宇宙人は、高度な文明に裏付けられた超科学を保有し、侵略にせよ友好にせよ、上から目線で接してくるのが普通だ。
 そんな常識を覆し、卑小な一市民として街中に溶け込もうとしながら悪目立ちしてしまい、悲しいほど些細だが致命的な事件に巻き込まれ続ける。それがシュメール星人の「彼」である。
 裏を返せばこれは世知辛い世間の風を描く物語である。「最悪の接触(ワースト・コンタクト)」(筒井康隆 著)にも劣るとも勝らない意思のすれ違いを味わうことで、明日は今日より人に親切に接したい気持ちになる。


■著者情報
ツナミノユウ - はてな
ツナミノユウ - pixiv


■作品情報
シュメール星人 - はてな
ウルトラジャンプエッグ
※本作品掲載のオンライン雑誌。


■書誌情報
シュメール星人 第1巻(2009.01.19/2009.01.24)
※以下、続刊予定。


■付録情報
・本体表1にカバーと版違いイラストを掲載。
・話間に補足説明コラムとおまけイラストを掲載。
・巻末にコラム掲載。


■装丁
森田彩美(POCKET)

シュメール星人 1 (ヤングジャンプコミックス)

シュメール星人 1 (ヤングジャンプコミックス)