【Book】エア新書 発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”

石黒謙吾 著、
学習研究社 刊、
ネタはイタダキ、中身は充実の「リアルエア新書」。

 ここ数年の新書ブームによって膨大な数のレーベルが刊行している。
 本書ではレーベルごとの傾向や各書の企画・内容について分析を行い、そこから「いかにも存在しそうな」「存在したら面白そうな」架空の新書100冊の案を提示している。


 本書の冒頭「はじめに」のまさに第1文に、こう書かれている。

エア新書っていう投稿サイトがあって、タイトルと著者名が書かれた架空の新書の表紙画像が並んでるんです。それが、企画はいいのに、中身がイマイチなんですよ〜。石黒さんが作ったら面白くなると思うんですけど、本にしてみたらどうですか?

 著者にある編集者がこう提案したとのことだが、その破廉恥な企画案を本当に本にしてしまったのが本書である。


 だが、過去15年に著者・編集者として約150冊の書籍を執筆・企画してきた著者だけあり、本当の件のサイトを上回る面白さになっている。


■新書の「型」
 本書に登場する「エア新書」は、1書あたり2頁、カバー表裏を模している。
 本書では新書の「型」を以下のように規定している。


・題名(カバーに記載)
・副題(カバーに記載)
・著者名(カバーに記載)
・惹句(帯に記載)
・概要5点(裏カバーに記載)


 前3項目はサイト「エア新書」でも設定可能だが、後2項目は本書で独自に付加した点である。これによってより「らしさ」が向上している。


■本書の構成
 まず冒頭30頁(「はじめに」「目次」等を除けば20ページ)で、「最近の新書」なるものの分析を、著者得意のインチキチャートを多様しながら整理している。


chart1 マトリクスで把握する[各社新書レーベル]のイメージ
 主要32レーベルの位置づけを「知識欲−金銭欲」「あっさり−こってり」の2軸マトリクスで分析。


chart2 ツリーチャートで見る[新書タイトル]の構造パターン分類
 最近の新書はどれも似た様な題名の印象を受ける。それは「パクリ」「便乗」から既に「類型としての黄金律」になった感もある。
 そこで「それらしい題名」をつけるためのツリーチャートを著者独自の研究に基づき提示している。


chart3 フローチャートで理解する[石黒式ネタ作り]の発想法
 本書ではネタを作成するにあたり、著者名を芸能人・政治家・歴史上の人物などの著名人としている。これはその人が持つ性質や関連する事件などを元にすることでネタを膨らませやすいという利点を持つ。
 本書では読者にも遊びとしてエア新書を考えてみることを提案している。その際、上記のような著名人でも良いが、身の回りの集団に特化した人物──例えば趣味領域での著名人や、友人・知人・行きつけの店の店員など──を題材にするもの面白いと述べている。

 上記を踏まえ、本項では企画における12の段階をフローチャートとして提示している。


chart4 レーダーチャートで比較する[各エア新書]の傾向
 エア新書のネタを考えるという行為は、日常生活にも役に立つと著者は説く。
 実際に書き出したりしなくても、日常のふとした情景を編集者のような客観視点で見てエア新書化し、心の中でつぶやいたり、口に出して周囲の人物に伝える。そういう思考遊戯を行ったり、失敗への愛ある「ちゃかし」を行ったりすることで、ものの考え方・言葉の伝達様式・語彙などが豊かになるのではないだろうか。

 そういう思考を身に着けるためには、作成したネタを評価してみることも必要となろう。本項では最後に、本書に登場する100のエア新書について、「笑い」「シニカルさ」「構造美」「実現可能性」「羊頭狗肉感」の5つの視点でレーダーチャートにより分析評価している。


 続いて本編として、エア新書100件がひたすら並んでいる。
 最も気に入った1点をここに引用しておく。


題名:
 エグゼクティブはみんなホトトギスを飼っている

副題:
 ──男たちのサクセスを鳥が支えていた

著者:
 徳川家康豊臣秀吉織田信長

惹句:
 3人の戦国武将が夢の会談!
 鳥カゴを挟んで国政を揺るがした議論7時間。

概要:
・「待機」「誘導」「攻撃」が飼育のすべて
・鳥を知らずして政(まつりごと)語るなかれ
・幸運の使者を天守閣に放して
・究極の癒し=バードサウンドセラピー
・鳥カゴで学ぶ兵糧攻めの極意


※有名なホトトギスの3句を「待機」「誘導」「攻撃」と表現したのは見事。


■著者情報
石黒謙吾 - Wikipedia
石黒謙吾 - はてな


■書誌情報
エア新書 発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”(2009.01.XX/2009.01.30)


■装丁
齋藤視倭子


■参考情報
エア新書
※遊戯サイトの一種。メイン/サブタイトルを入力すると新書のカバーイメージを生成・登録可能で、サイト全体が書籍販売サイトを模した構成になっている。
 ウェブサイト製作・ウェブサービスコンサルティング会社「ゼロベース」が製作。2008年のエイプリルフールにサービスを開始した。

エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ” (学研新書)

エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ” (学研新書)