【Book】マイクロフォーマット

副題:Webページをより便利にする最新マークアップテクニック、
John Allsopp 著、浅野紀予 訳、木達一仁 監訳、
毎日コミュニケーション 刊、
ウェブに意味が込められる技術。


■マイクロフォーマットの概要
 「マイクロフォーマット」はウェブのコンテンツに含まれる人、場所、催事などの情報の意味を明確に示し、活用しやすくするための仕組みです。


 ウェブが普及して膨大な情報を簡単に参照することができるようになりました。これらの情報を人間が参照し理解する分には現状でも特に問題ありませんが、コンピュータシステムによってより高度な活用をするためにはまだ壁があります。

 たとえばあるウェブページに以下のような文章が記述されていたとします。


○月○日、△△のコンサートを鑑賞するために□□に行った。


 人間はこの文章をみて「○月○日」が日付、「△△のコンサート」が催事、「□□」が場所であることを容易に理解可能ですが、現状コンピュータシステムによってこのような「意味」を読み取らせることは困難です。
 もしこれができるようになれば、以下のような情報活用を行うことが可能となります。


・過去に書いた日記から、催事参加記録一覧を生成する。
・複数の人のブログ等の記事を集め、催事参加の評判を集計する。
・同日に開催された催事の中で、どのイベントの人気が高かったかを判別する。


 これを実現するための要素技術の一つが、マイクロフォーマットというわけです。


■マイクロフォーマットの具体的内容
 ウェブコンテンツの記述はHTML(XHTMLを含む)によって行います。マイクロフォーマットは、HTMLの枠組みを変えずに一定のルールに基づく記述方法を導入することで実現することができます。
 たとえば上記の例で言えば、以下のように記述することが可能です。

<div class="vevent">
<abbr class="dtstart" title="2008XXXX">○月○日</abbr><span class="summary">△△のコンサート</span>を鑑賞するために
<span class="location">□□</span>に行った。
</div>

 この記述の特長は以下の通りです。


・催事情報を記述するマイクロフォーマット「iCalendar」を使用。
・単独の催事のため、「vevent」要素を1つだけ使用し、日付、内容、場所をそれぞれ「dtstart」「summary」「location」で示す。
・HTML要素としては「div」「abbr」「span」を本来の用途を変えずに使用し、特にHTMLとしての拡張を行っていない。
・上記の記述を行う限り、一般的なブラウザで見た目が変わることはない。
・意味に応じて見た目を変えたい場合、適宜CSSで各classに装飾を施すことも可能。


■他の方法論との比較
▼DBとテーブル
 データの意味構造を明確にするためDBを使用するという方法は広く用いられています。その情報をウェブに表示する際、意味構造を反映したテーブルによって表現するというのも標準的方法です。
 この方法は、(1)規定された構造を持つデータの集積である、(2)一覧性が重視される、(3)1件の情報が比較的少ない情報を含む、といった場合には有効と考えられます。


XMLとXSL/CSS
 ウェブシステムを扱う上で需要なデータ形式XMLがあります。XMLでは必要に応じて情報に含まれる情報要素を個別に定義し、意味や性質の構造を表現することができる、自由度の高い方法です。
 情報の構造表現方法としてXMLは有用ですが、表示はその目的ではないため、ウェブ上で情報を公開・表示するためにはXSLTでHTMLに変換したり、CSSで表示形式を定義したりする必要があります。
 この方法は、(1)規定された構造を持つデータの集積である、(2)複数システムが相互に情報交換する、(3)情報の構造はサーバ側で管理・利用する、といった場合には有効と考えられます。


▼マイクロフォーマット
 上記に対し、マイクロフォーマットは以下のような場合に適していると考えられます。


(1)自由形式の情報内に埋め込まれた情報素片に意味づけを行う。情報の全体は、特に規定された構造を持つ必要がない。
(2)個々の情報素片は散在していて良い。一覧して使用するかは二次利用の際の要件となる。
(3)情報は2次利用することが中心となる。クライアント側で抽出・集積したり、第3者的システムが収集・抽出したりすることが考えられる。


■本書の内容
 本書では、マイクロフォーマットの概要、登場の背景、最新動向、現在利用可能な具体的なマイクロフォーマット、導入事例、新規開発の方法などについて、網羅的に説明しています。
 マイクロフォーマットを利用する上で必要な知識を概観することができます。


目次:
Part I マイクロフォーマット入門
Chapter 1 マイクロフォーマットとは?
Chapter 2 マイクロフォーマットの最新事情

Part II マイクロフォーマットを利用する
Chapter 3 構造的かつ意味的なHTML
Chapter 4 リンク形式のマイクロフォーマット: rel-license、rel-tag、rel-nofollow、VoteLinks
Chapter 5 人間関係を記述するマイクロフォーマット: XFN
Chapter 6 位置情報マイクロフォーマット: geo、adr
Chapter 7 コンタクト情報マイクロフォーマット: hCard
Chapter 8 イベント情報マイクロフォーマット: hCalendar
Chapter 9 レビューとレジュメのマイクロフォーマット: hReview、hResume
Chapter 10 シンジケートコンテンツのマイクロフォーマット: hAtom

Part III 事例研究
Chapter 11 事例研究: Cork'd
Chapter 12 事例研究: Yahoo!

Part IV マイクロフォーマットを開発する
Chapter 13 マイクロフォーマットの開発プロセス

Part V Appendix
A マイクロフォーマット仕様リファレンス
B マイクロフォーマットのデザインパターン
C 関係者、ツール、サービス、コンテンツ公開サイト一覧


■書誌情報
マイクロフォーマット Webページをより便利にする最新マークアップテクニック(2008.07.23/2008.07.23)

マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)

マイクロフォーマット ~Webページをより便利にする最新マークアップテクニック~ (Web Designing BOOKS)